復学支援プログラム設計書 v1.0|ステップアップ・ピアリンク

株式会社 muutos / 自立訓練(生活訓練)

もう一度、キャンパスに戻るための
6〜12ヶ月のプログラム

生活を立て直し、自分の取扱説明書をつくり、大学と交渉できるようになる。 そして復学したあとも、単位が取れるまで伴走する ── 「通えるようになりました」で終わらせない設計。

標準期間:6〜12ヶ月+復学後の定着支援 対象:休学中/在籍中の不調/中退後の再進学 制度上限:24ヶ月 v1.0(大学説明用のたたき台)
01

このプログラムが約束すること

「元気になりました」では大学は動かない。到達点を3層で定義し、それぞれ測れる形にする。

LEVEL 3 / 交渉できる 大学に自分から合理的配慮を申請し、学内の支援窓口とつながっている 測り方:配慮申請の提出、学内相談室との面談実施、トリセツの完成 LEVEL 2 / 学べる 90分の課題を最後までやり切り、履修計画を自分で立てられる 測り方:90分課題の完遂率、履修シミュレーションの作成、レポート提出の実績 LEVEL 1 / 通える 起床時刻が安定し、週の予定どおりに家を出られる 測り方:通所率80%以上、起床時刻のばらつき±60分以内、睡眠ログの継続 下から順に積む。飛ばさない。Level 1が崩れたら必ず戻る。
図1:到達点の3層定義

「卒業」の定義

正式な卒業=復学後の定着まで

復学して1学期を走り切り、単位を取得できた時点を卒業とします。復学がゴールではなく、戻って続けられて初めて成功。ここまで見る事業所はほとんどないので、大学に対する最大の差別化になります。

ただし、降りる自由は本人にある

「復学申請が通ったのでもう大丈夫」と本人が判断すればそこで終了できます。卒業要件は事業所の都合ではなく本人の希望が優先。無理に引き止めない代わりに、いつでも戻れる窓は開けておきます(再利用の相談は随時受付)。

補足メモ大学への説明でいちばん効くのは「復学後も見ます」の一言。学生相談室が本当に困っているのは、戻ってきた学生が半期でまた消えること。そこを引き受けると言える事業所は強い。
02

対象と3つのトラック

同じ建物・同じ科目で、走り方だけ変える。通所日数が違うので収支上も分けて管理する。

トラック対象ゴール通所ペース標準期間
A|復学 大学・専門学校を休学中で、復学の意思がある人 復学 → 1学期を走り切り単位取得 週4〜5日 6〜12ヶ月+定着
B|在籍継続 在籍したまま出席が崩れている/単位を落とし始めている人 休学・退学を回避して在籍を維持 週2〜3日
(授業のない曜日)
学期単位で伸縮
C|再進学 すでに中退したが、もう一度進学したい人 進路決定 → 出願 → 入学 → 定着 週4〜5日 6〜12ヶ月
トラックA

科目はフルセット

5科目すべてを順番に。復学時期(多くは4月・10月)から逆算してPhaseを配置します。時期が決まっているぶん設計しやすい。

トラックB

ここが大学に一番刺さる

休学した学生を戻すより、休学させずに済ませるほうが大学は嬉しい。授業のない曜日だけ通い、生活の立て直しと配慮申請だけを先に済ませる。科目は「セルフアドボカシー」「スマートADL」を優先、ストレス・シミュレータは実習期の直前に集中投下。

トラックC

進路開拓が追加される

科目に加えて、進路研究・出願実務・学費と奨学金の設計・入試対策の外部連携が必要。この層は既存の支援がほぼ無く、居場所がない。ただし手間はかかるので、開所直後は定員の2〜3割までに抑える。

受け入れの前提条件(ここは明確に)

項目基準
年齢原則18歳以上(高校在学中は対象外。卒業後または高校を離れてから)
受給資格障害福祉サービス受給者証。障害者手帳は不要で、医師の診断書や自立支援医療受給者証で申請可能。取得の同行支援も行う。
医療主治医がいることが望ましい。未受診の場合は連携医療機関へつなぐところから開始。
受け入れが難しいケース急性期で医療的な安定が優先される状態、他者への加害リスクが現に高い場合。この場合は医療・相談支援へ確実につないだうえで、状態が落ち着いてからの再相談とする。
午後のピアリンク(子どもとの活動)について:18歳以下の子どもと接する活動なので、受け入れ判断は通常より慎重に。加えて、メンター活動は全員が自動的に参加するものではなく、後述のライセンス制で段階的に許可する設計にしています。ここを曖昧にすると、行政にも保護者にも説明できません。
03

全体設計:5つのステージと判定ゲート

「なんとなく通っているうちに良くなる」を排除する。次に進む条件を全部書き出す。

STAGE 0 / 2〜4週 つながる 見学・体験・受給者証 STAGE 1 / 1〜2ヶ月 再構築 生活リズムと安全 STAGE 2 / 2〜4ヶ月 獲得 トリセツと学ぶ体力 STAGE 3 / 2〜3ヶ月 検証 模擬復学と配慮交渉 STAGE 4 / 3〜6ヶ月 定着(復学後) 通所を減らしながら伴走 GATE 1GATE 2GATE 3GATE 4 オレンジの丸=判定ゲート。サビ管・支援員・本人の三者で判定し、通らなければ同じステージを継続する。 進めないこと自体は失敗ではない、と初日に必ず伝える。
図2:ステージ進行と4つの判定ゲート
GATE 1 → 再構築へ受給者証が発行され、通所日と時間が本人と合意できている。/通所初週に1日でも来られた。
GATE 2 → 獲得へ直近4週の通所率70%以上。/起床時刻のばらつきが±90分以内。/睡眠ログを2週以上つけられた。/体調悪化時に自分から連絡できた実績が1回以上ある。
GATE 3 → 検証へ「自分のトリセツ」v1が完成している。/90分の課題セッションを最後まで座れた回数が5回以上。/通所率80%以上。
GATE 4 → 定着へ(=復学申請の可否判断)模擬交渉を3回以上こなし、配慮の要望が言語化できている。/大学の相談室・学生課との面談を実施済み。/復学後の週間スケジュールを本人が書けている。/主治医の同意がある。
ゲートを置く理由:自立訓練は原則2年で終わります。時間は有限なので、「なんとなく通所」の期間をつくらない。同時に、ゲートで止まった人には必ず「何が足りないか」「次の4週で何をするか」を紙で渡します。止まった理由が本人に見えていないと、通所が切れます。
04

週間時間割

9:00–15:00。午前は全員共通、午後は曜日で「大学の課題」と「子どもとの活動」に分かれる。

時間
9:00–9:30
コンディショニング
睡眠・体調のデジタル管理/ピア・シェア(今日の調子を3段階で共有)
9:30–10:40
1限
キャンパス・マネジメント(シラバス解読・逆算管理・単位計算・学籍実務)
10:50–12:00
2限|特化科目
セルフ
アドボカシー・ラボ
ストレス・
シミュレータ
スマートADL セルフ
アドボカシー・ラボ
ピアリンク準備
(教材づくり)
12:00–13:00ピア・ランチタイム(構造化しない時間。ここでの雑談が実は一番効く)
13:00–14:30
3限
アカデミック・ワーク
個別面談枠
ピアリンク実践
子ども受け入れ
アカデミック・ワーク
個別面談枠
ピアリンク実践
子ども受け入れ
ピアリンク実践
子ども受け入れ
14:30–15:00
終礼
リフレクション(できたことを言語化・翌日の服装まで決める)

午前は全員同じ

共通の枠にすることで、遅れて入った人も途中から合流できる。個別最適化しすぎると運営が回らない。

2限だけ曜日で変わる

各科目12週で1周。週1コマ×12週=約3ヶ月で1科目を修了。セルフアドボカシーだけ週2コマなので6週で1周し、後半はStage3の実践に充てる。

子どもは火・木・金の午後

学生側は週3回のメンター機会。月水は自分の課題に集中する日として確保 ── メンター活動だけになると本末転倒。

補足メモ時間割は「守るため」ではなく「戻ってくるため」にある。崩れた日があっても、翌週の同じ曜日に同じことをやっている、という予測可能性が回復を支える。だから科目を曜日に固定しています。
05

5つの科目と、全セッションの中身

各科目12週。1コマ70分=導入10分・ワーク45分・共有15分の型で統一する。

科目1|キャンパス・マネジメント(毎朝1限・通年)

大学生としての実務能力。ここが弱いまま戻ると、また同じところで詰まる。

テーマ持ち帰るもの
1–2学則を読む(休学の上限、復学の手続きと締切、除籍の条件)自分の学校の学籍カレンダー
3–4単位の棚卸し(取得済み・未取得・必修の残数を全部書き出す)卒業要件シート
5–6シラバス解読(評価基準・出席要件・課題量から難易度を判定)履修候補リスト
7–8履修シミュレーション(week 1が過密でないか、連続コマの負荷を検証)復学初期の時間割案
9–10レポートの逆算管理(締切からタスクを最小単位に分解しガントに落とす)タスク分解のテンプレ
11–12お金の実務(学費、奨学金の停止と復活、授業料減免、傷病による猶予)学費・支援制度の一覧

科目2|セルフアドボカシー・ラボ(月・木2限)

「自分のトリセツ」を作り、大学と交渉できる状態まで持っていく。本プログラムの背骨。

セッションやること
1いつ、何がきつくなったか時系列で自分史を書く。原因探しではなく事実の整理として扱う。
2特性の言語化①:感覚と疲労音・光・匂い・人混み・疲れやすさを、場面と程度で記述する。
3特性の言語化②:注意・記憶・対人集中の持続時間、口頭指示の取りこぼし、雑談の負荷などを棚卸し。
4データで語る睡眠ログや通所記録を根拠に変える。「しんどい」を数字にする練習。
5合理的配慮とは何か2024年4月からの義務化を含む制度の理解。何が「配慮」で何が「特別扱い」なのかの線引き。
6配慮の選択肢カタログ試験時間延長、別室受験、板書の撮影許可、レポート代替、座席指定、欠席連絡の代替手段など、実在する配慮を知る。知らないものは要求できない。
7トリセツ v1 を書く後述の様式に沿って初版を作成。
8根拠をそろえる診断書、自立支援医療、支援機関の意見書、自分のログ。何を出せば通りやすいかを整理。
9大学の書式に落とす実際の申請書フォーマット(学校ごとに違う)に記入する練習。
10模擬交渉①:相談室の窓口役職員が相談員役。まずは受け止めてもらえるパターンで成功体験を作る。
11模擬交渉②:断られる/条件をつけられるここが本番。「前例がない」「他の学生との公平性が」と言われたときにどう返すか。引き下がる線と譲れない線を決めておく。
12トリセツ v2 完成・発表他の利用者の前で発表。人に説明できて初めて完成とする。

科目3|ストレス・シミュレータ(火2限)

実習と対人場面で潰れないための実技。医療・看護・福祉系の学生には特に必須。

セッションやること
1自分に何が起きるか知るストレス時の身体反応・思考・行動を観察して記録する。
2早期サインの特定限界の3歩手前のサインを本人と特定(例:肩が上がる、返事が単語になる)。
3コーピングを30個出す質より量。1分でできるもの/5分/30分に分類する。
4呼吸とグラウンディングの実技頭で分かるではなく体で覚える。毎回冒頭2分の習慣にする。
5再現①:急な予定変更直前の担当変更、集合時間の前倒しなど。実習で最も多いストレッサー。
6再現②:厳しいフィードバック人格否定と業務指摘を切り分けて聞く訓練。落ち込みからの復帰手順まで含める。
7再現③:報告・連絡・質問忙しそうな指導者にいつ声をかけるか。話しかける最初の一文を型として持つ。
8ヘルプサインの出し方「5分だけ席を外していいですか」を言う練習。倒れる前に抜ける技術を身につける。
9グループワークでの立ち回り役割の取り方、発言できないときの代替手段。
10崩れたあとのリカバリーパニックや過呼吸のあと、どう休み、いつ戻るか。手順書を作る。
11実習期のセルフケア計画実習の前後2週間の生活設計。事前に主治医と共有する。
12総合演習複数のストレッサーを組み合わせた1コマ通しの演習。

科目4|スマートADL(水2限)

根性ではなく仕組みで生活を維持する。一人暮らしの学生ほど効果が大きい。

セッションやること
1現状把握睡眠・食事・外出・支出のログを開始。まず測る。
2睡眠と光体内時計の仕組み、朝の光、就寝前の画面。昼夜逆転の戻し方を計画。
3起床の仕組み化アラームの多段設定、カーテン、照明のタイマー、起きたら最初にやる一手を決める。
4タスク管理ツールの導入紙かアプリかを本人と選定。続かない方式を採用しないことが最重要。
5締切アラートの設計3日前・前日・当日朝の自動通知を設定する。
6家事の自動化と外注定期配送、ロボット掃除機、洗濯乾燥、宅配クリーニング。家事を減らすのは怠けではなく戦略。
7食事の最低ライン調子が悪い日でも食べられるものを5つ確保。買い置きリストを作る。
8お金の管理固定費の把握、使途不明金、体調が悪い日の浪費パターンへの対処。
9デジタル環境の整備通知の設計、SNSとの距離、大学のポータルとメールを見る習慣づくり。
10通学のシミュレーション実際の時間に実際のルートで大学まで行ってみる。所要時間と消耗度を測る。
11プランBを作る体調不良時の連絡先・連絡文のテンプレ・休む判断基準を事前に決めておく。
12生活マニュアル完成1週間の運用手順を1枚にまとめる。復学後もこれを見て運転する。

科目5|ピアリンク実践(火・木・金 午後)

子どもと関わる時間。個別支援計画上は「社会適応訓練」として位置づける。次章のライセンス制で段階的に進む。

時間内容
13:00–13:15ブリーフィング(今日来る子ども、注意点、自分の担当と目標の確認)
13:15–14:15活動本体(学習サポート、ボードゲーム、制作、進路の雑談など)
14:15–14:30片付けと引き継ぎ
14:30–15:00デブリーフィング(うまくいったこと、困ったこと、次にどうするか)
デブリーフィングが本体です。子どもと関わること自体より、「今日の自分の関わりを振り返って言語化する」ここでメタ認知が育つ。ここを省略すると、ただのボランティアになって訓練としての説明がつかなくなります。行政にも大学にも、この30分の存在をセットで説明してください。
06

メンター・ライセンス制

子どもと関わる資格を3段階にする。学生の安全にも、子どもの安全にも、両方に効く。

LEVEL 1 / 見習い 観察と準備のみ 教材づくり、片付け、場にいるだけ LEVEL 2 / サポーター 職員の隣で1対1 必ず職員が同席。会話と学習の補助 LEVEL 3 / メンター セッションを1本持つ 企画から振り返りまで担当(職員は後方) 昇格の判定は月1回。降格もある(体調が落ちたら迷わずLevel 1に戻す)。
図3:メンター・ライセンスの3段階
段階できること昇格の条件
Level 1
見習い
教材準備、環境整備、活動の観察。子どもと個別に関わることはしない。Stage 1を通過。通所率70%以上。守秘義務と関わり方の研修を受講済み。
Level 2
サポーター
職員同席のもと、1人の子どもの学習補助や会話。Level 1で4週以上。デブリーフィングで自分の関わりを説明できている。子ども側の反応が安定している。
Level 3
メンター
30〜60分のセッションを企画・実施・振り返りまで担当。Level 2で8週以上。Stage 2以上。自分の体調管理ができている(早期サインで自分から抜けられる)。
絶対に守るルール(研修で明文化する):①子どもと個人的な連絡先を交換しない ②SNSでつながらない ③施設外で会わない ④聞いた話は職員に共有する(子どもとの間で秘密を作らない)⑤自分がしんどい日は正直に申告して降りる。⑤を言える空気を作るのが職員の仕事。無理をしてメンターを続けた結果、学生が潰れるのが最悪のシナリオ。
補足メモライセンス制は、大学・行政・保護者への説明でそのまま使えます。「学生が子どもの面倒を見る」と言うと必ず「大丈夫なんですか」と聞かれるので、この図を出す。加えて、学生本人にとっては昇格が目に見える成長の指標になるので、モチベーション設計としても機能します。
07

評価:何を、いつ測るか

大学と行政を動かすのは実感ではなく数字。開所初日から測り始める。

指標測るもの頻度
通所率予定日数に対する実通所日数毎日記録/月次集計
起床時刻のばらつき1週間の起床時刻の最大差(生活リズムの安定度)毎日
睡眠ウェアラブルまたは睡眠日誌。必要に応じてPSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)毎日/尺度は3ヶ月ごと
精神的健康度K6(6項目・0〜24点)。悪化の早期発見に使う入所時・毎月
自己効力感一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)等入所時・3ヶ月ごと・卒業時
目標達成度GAS(Goal Attainment Scaling)。本人の個別目標を−2〜+2で評価月次モニタリング時
90分課題の完遂率アカデミック・ワークで最後まで座れた回数の割合毎回
トリセツ完成度様式の項目充足率随時
最終アウトカム復学・進学率/復学後1学期の単位取得/中退の有無卒業時・卒業後6ヶ月・1年
使用前に必ず確認:心理尺度には著作権があり、購入や使用許諾が必要なものがあります(GSESは市販の検査用紙を購入する形が一般的)。K6は比較的使いやすいですが、いずれも実施・解釈は有資格者の関与が前提です。採用する尺度は、精神保健福祉士・公認心理師と相談して確定してください。ここを適当にやると、大学に出したときに一発で信用を失います。
大学に見せるレポートの形:月次で「通所率・生活リズム・課題完遂率・本人の目標達成度」を1枚にまとめたものを、本人の同意のもとで学生相談室と共有します。大学が一番ほしいのは「戻していいのか」の判断材料。それを毎月出せる事業所はまずありません。ここが連携の入口になります。
08

「自分のトリセツ」の様式

これが最終成果物。本人が持ち、大学に出し、復学後も使い続ける1枚。

項目書く内容(記入例)
1. 得意なこと・強みまずここから書く。「一度理解すると手順を正確に守れる」「文章を書くのは苦にならない」
2. 苦手な場面状況を具体的に。「複数人が同時に話す場面で内容が入ってこない」「口頭だけの指示は抜ける」
3. 体調のサイン初期・中期・限界の3段階で。「初期=返事が単語になる/限界=翌朝起きられない」
4. 効くセルフケア1分/5分/30分に分けて。実際に試して効いたものだけを載せる。
5. お願いしたい配慮具体的な行動レベルで。「レジュメを事前にデータでほしい」「発表順を最初か最後にしてほしい」
6. 配慮の根拠診断名は必須ではない。「この配慮があると出席が継続できたという記録がある」でよい。
7. 困ったときの連絡先大学の窓口、主治医、支援機関、家族。優先順位をつけて記載。
8. 配慮が不要な場面ここが効く。「グループ作業は問題ない」「実技は配慮不要」など、必要ない範囲を自分から明示すると、交渉の通りが劇的に良くなる。
設計思想:トリセツは「できないことリスト」ではありません。強みから始めて、必要ない配慮まで自分で線を引く構成にすることで、大学側に「この学生は自分を把握している=受け入れやすい」と感じてもらえます。項目1と8を入れているのはそのためです。
09

学籍の実務管理 ── 見落とすと全部無駄になる

支援機関がいちばん抜かすところ。制度の締切で詰む学生が実際にいる。

入所初日復学の4〜6ヶ月前 復学の1〜3ヶ月前復学月 学則を一緒に読む休学期限を確認 復学願の締切を逆算主治医と相談開始 復学願・診断書提出配慮申請・履修相談 履修登録支援窓口へ引き継ぎ 締切は学校ごとに全く違う。必ず本人の学校の学則で確認する。
図4:復学までの実務カレンダー

入所初日に必ず確認する項目

確認事項なぜ危険か
休学期間の上限連続で何年、通算で何年までかは学則で定められている。上限を超えると除籍。ここを知らずに時間を使うのが最悪のパターン。
復学願の提出締切学期開始の1〜2ヶ月前が一般的だが学校差が大きい。1日過ぎると半年遅れる。
在籍料・休学中の学費休学中も在籍料が発生する学校がある。未納で除籍になる例がある。
奨学金の扱い休学中は原則停止。復学時に復活の手続きが必要で、これも締切がある。
単位の有効性専門学校は学年制で単位の持ち越しが効かず、原級留置や再入学扱いになることがある。大学と同じ感覚で考えると事故る。
診断書の要否復学時に主治医の診断書を求める学校が多い。主治医との関係づくりを早めに始める必要がある。
ここは本人任せにしない。初日にサビ管が本人と一緒に学則をダウンロードして読み、「その人専用の学籍カレンダー」を作って壁に貼る。締切の1ヶ月前・1週間前にアラートを出す。これは支援というより事務作業ですが、ここができるかどうかで結果が変わる。そして大学の担当者に対しては、この運用の存在自体が強い信頼材料になります。
10

復学後の定着支援(Stage 4)

戻った直後の1ヶ月が一番危ない。通所を徐々に減らしながら、切らずに離す。

時期通所ペースやること
復学 −1ヶ月週4〜5日実際の時間割で予行演習。通学ルートを本番の時間で往復する。
復学 1ヶ月目週2日(授業のない日)毎週の振り返り。最初の欠席が出た瞬間に必ず接触する。ここを放置すると連鎖する。
2〜3ヶ月目週1日課題の進捗確認、中間試験に向けた計画。配慮が実際に機能しているかの点検。
4〜6ヶ月目隔週〜月1期末に向けた調整。次学期の履修計画。学内の支援窓口へ主担当を移す。
卒業判定1学期を走り切り、単位を取得。学内支援へ引き継ぎ完了。

再発時の対応をあらかじめ決めておく

調子が落ちたら通所日数を戻す。これを「失敗」ではなく「想定内の運用」として最初に本人と合意しておきます。合意がないと、崩れたときに本人が姿を消します。

卒業生はメンターとして戻れる

復学後もボランティアメンターとして関われる枠を用意します。本人にとっては居場所の維持、事業所にとっては「実際に戻れた先輩」という最強の広報素材、子どもにとっては生きたロールモデル。

11

大学に持っていくもの(次のステップ②の準備)

プログラムができたら、この4点セットを持って学生相談室を回る。

01

プログラム概要 1枚

この設計書の図1・図2・時間割だけを抜いた1枚。詳細は聞かれてから出す。

02

月次レポートの見本

大学に毎月何が届くのかを見せる。これが一番効く。

03

引き継ぎシートの様式

復学時に大学へ渡す書式。トリセツの要約+配慮の要望+緊急時の連絡フロー。

04

費用の説明

障害福祉サービスなので本人負担は原則1割、多くは上限額の範囲内。大学も学生も「高額な私塾」だと誤解しているので先に潰す。

説明の順番(これを守ると通りやすい)

言うこと
1中退による損失の話から入る(1名あたり年間約100万円の学費損失)。学生支援のお願いではなく経営の話として始める
2「休学した学生を戻す」より先に「休学させずに済ませる」トラックBの話をする。大学が本当に困っているのはこっち。
3合理的配慮の義務化で大学側の負担が増えている点に触れ、トリセツ作成を外部で引き受ける提案として位置づける。
4月次レポートの見本を出す。「戻していいかの判断材料を毎月お渡しします」
5最後に費用(本人負担1割)と、手帳が不要であることを伝える。ここで相手の顔が変わる。
補足メモ初回訪問では契約を取りにいかない。「こういう受け皿ができます、困っている学生がいたら思い出してください」で十分。紹介は関係性ができてから来る。ただし資料は必ず置いてくる(担当者が異動しても資料は残る)。
12

運営:職員の1日と記録

プログラムが良くても、回らなければ意味がない。

時間職員の動き
8:30–9:00朝ミーティング。欠席連絡の確認、今日の要注意ケースの共有、午後の子どもの人数確認。
9:00–12:00プログラム実施。1名が進行、1名が個別フォロー(離席した人につく役)。
12:00–13:00ランチ帯は必ず職員1名が場に残る。ここで出る雑談が支援の情報源
13:00–15:00火木金は子ども受け入れ(学生側担当1名・子ども側担当1名の2名体制)。月水は個別面談枠。
15:00–16:00記録入力、欠席者へのフォロー連絡、翌日の準備。
16:00–17:30関係機関との連絡、見学対応、月次モニタリング資料の作成。

記録のルール

  • 個別支援計画は3ヶ月ごとにモニタリング。ステージ移行の判定と同じタイミングで回すと二度手間にならない。
  • 午後のピアリンク活動は、必ず学生側の記録(訓練としての観察)子ども側の記録(居場所事業の実績)を別々に残す。会計だけでなく記録も分けることで、二重とりの疑義を完全に潰せる。
  • 個別支援計画の記載例:「他者への支援場面を通じて自己有用感の獲得を図るとともに、活動後の振り返りにより自己の対人特性を客観視できるようになることを目標とする(社会適応訓練)」
属人化させない:各セッションは進行台本(60分の流れ・使う教材・想定される躓き)を1枚で用意し、誰が入っても同じ品質で回せるようにします。開所時から作っておかないと、後から作る余裕は絶対に生まれません。12週×5科目=60本ですが、まずは最初の4週分(20本)だけ先に作れば開所できます。
13

この設計書の宿題

大学を回る前に埋めておきたいところ。

①評価尺度の確定

K6・GSES・GASなどの採用可否と、使用許諾・購入の要否を精神保健福祉士/公認心理師と確認。大学に出す数字の信頼性の土台なので、ここは曖昧にしない。

②セッション台本の作成

まず最初の4週分(20本)。誰が書くかを決める。プログラム設計担当を1人立てないと進まない。

③月次レポートの見本作成

大学営業の主武器。架空の1名分でいいので、実物を作ってから回る。

④学則の読み込み

連携予定の主要校(広島大・文教大・修道大+主要専門学校)の休学・復学規程を先に読んでおく。相手の学則を知って行くと、相談室の担当者の反応が変わる。

順番の確認:①プログラム設計(=この資料、あと台本と評価尺度)→ ②大学・専門学校へ連携説明 → ③行政(障害福祉課・子ども家庭課)→ ④18歳以下の団体へ案内。③に行くときに「大学と話がついている」という事実を持っていけるのが、この順番の最大の狙いです。行政は前例と裏づけで動くので。

株式会社muutos / ステップアップ・ピアリンク 復学支援プログラム設計書 v1.0
※ 心理尺度の使用可否、制度・報酬の要件、学則に関する記載は一般的な傾向を含みます。実施前に必ず一次情報および有資格者に確認してください。

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